院長ブログ
がん治療で注目の「高濃度ビタミンC点滴療法」とは?
(Medical Tribune紙 記事より)
近年,がん治療における総合医療の観点から注目を集めている高濃度ビタミンC点滴(HDIVC)療法。5月20日,三番町ごきげんクリニックによる医療情報セミナーが東京都で開かれ,がん治療を専門とする同院長の澤登雅一氏が「あきらめないがん治療」と題してHDIVC療法について講演を行った。
がん細胞の死滅には点滴投与による血中ビタミンC濃度の十分な上昇が必要
HDIVC療法は1970年代,米国人生化学者Linus Pauling氏らにより,がん治療の補助療法として提唱された。がん患者に対して大量の高濃度ビタミンCを静脈内に点滴投与し,がん細胞を死滅させるというもの。ところが,その後,ビタミンCの経口投与により研究を行った反対論文(N Engl J Med 1979: 301; 687-690)が発表されると,医学を専門外とする同氏の理論よりも,著名な医療機関の研究グループによる後者の研究結果の方が信用され,点滴投与か経口投与かについては議論されないまま,HDIVC療法に対する積極的な研究は長年,行われてこなかったという。
しかし,2004年に発表された論文(Ann Intern Med 2004: 140; 533-537)により,ビタミンCの経口投与ではがん細胞を死滅させるための十分な血中濃度には達しないことや,血中のビタミンC濃度の上昇とがん細胞の死滅との関連性が発表され,HDIVC療法が見直されたという(図)。
現在,HDIVC療法は,三番町ごきげんクリニックなど,日本国内でも導入する医療機関が存在する。澤登氏はそのメカニズムを次のように説明する。
「多くの抗がん薬は,酸化的にがん細胞を攻撃する。しかし,ビタミンCは代表的な抗酸化物質であり,病気の予防法として取り入れるのは意味があるかもしれないが,抗腫瘍効果はないという反論があった。だが,2005年に発表された論文(Proc Natl Acard Sci USA 2005: 102; 13604-13609)により,高濃度のビタミンCは正常細胞にはダメージを与えず,選択的にがん細胞を攻撃することが分かった。ビタミンCの抗酸化作用によりがん細胞を直接,攻撃しているわけではなく,過酸化水素を誘導し,その酸化作用によってがん細胞を死滅させている」と述べた。
G6PD欠損者では溶血に要注意,有痛性皮下出血も6,500件中3回経験
ビタミンCの安全性を強調する一方,澤登氏は報告されている副反応も紹介した。中でも溶血については特に注意を促すとともに,新たに認められた有痛性皮下出血についても独特の副反応であると話した。「HDIVC療法において見られる溶血はG6PDという酵素が先天的に欠損した人に起こるもので,世界中で4億人いると言われており,日本人では極めてまれ。とはいえ,HDIVC療法を受ける前には必ず検査する必要がある」とした。
有痛性皮下出血は,「HDIVC療法独特の副反応であり,当クリニックでは6,500件中3回経験がある。点滴開始から15~45分で出血が起きており,穿刺とは対側の母子球筋,前腕内側,母指に出血が認められたが,2~3日以内に回復している」と報告した。
同氏によれば,現時点におけるHDIVC療法は,標準治療か代替療法かの位置付けは未確定。現在,米国やカナダ,欧州などでも臨床試験が行われ,同クリニックでも東海大学との共同研究に取り組んでいるという。
ビタミンCは、美容(美肌・美白)やアンチエイジングに役立つということで馴染みの深いビタミンですが、そのビタミンCを大量に体内に摂取することで、癌を治療しようというのが「超高濃度ビタミンC点滴療法」です。
経口接種ですと、大量となると、胃炎や下痢を引き起こしてしまい、継続できないために無理がありますから、経静脈的に接種するわけです。
理屈では、副作用の少ない、夢のような治療のようですが、実際には効果に確実性はなく、抗ガン剤の治療の座を脅かすほどの効果は期待できませんし、保険が効きませんから、抗ガン剤治療の何十倍といった費用がかかるわけで、継続はかなり困難になってきます。
しかし、藁をもすがりたい患者さんはたくさんおられるわけで、、、クリニックによって、かなりの値段の開きはあるものの、根強い需要があります。
G6PD欠損症という赤血球膜の遺伝性酵素異常がある方や、透析中などの腎不全の方、心不全の方などは、副作用が効果を上回ると考えられ、治療がうけられませんが、そうでなければ、ほとんど副作用はないだろうと言えます。
最初はビタミンC15gから点滴を始め、25g、50gと増量し、血液中のビタミンC濃度を測定しながら、投与するビタミンCの理想的な投与量を決定していきます。
一般的には、週に2回の点滴で6ヶ月間継続、その後の経過が良ければ週1回を6ヶ月、さらに2週に1回を1年間、その後は月に1回行うといった感じです。
当クリニックでも、こういった要望にこたえられるよう、日々研究を重ねてまいります。