院長ブログ
本邦初の乳幼児のロタウイルス胃腸炎予防ワクチン
~大切な赤ちゃんをロタウイルス胃腸炎から守りたい~
(グラクソ・スミスクライン プレリリースより)
グラクソ・スミスクライン株式会社(以下GSK)は、2011年7月1日付で同社の乳幼児向けロタウイルスワクチン「ロタリックス®内用液」(一般名:経口弱毒生ヒトロタウイルスワクチン)について「ロタウイルスによる胃腸炎の予防」を効能・効果として、厚生労働省より製造販売承認を取得しました。
「ロタリックス」は、2回の接種で有効なワクチンです。1回1.5mLの液体ワクチンを、4週間以上の間隔をあけて計2回経口接種します。本剤の接種は生後6週から可能であり、遅くとも24週までに計2回の接種を完了させる必要があります。
ロタウイルス胃腸炎は、感染性胃腸炎のひとつで、乳幼児の重症胃腸炎のうち最も頻度の高い胃腸炎です。国内では、年間約79万人が受診し、その約10%が入院しています。ロタウイルス胃腸炎には5歳までにほぼ100%の子供がかかると言われており、生後3カ月を過ぎてからの初感染時に重症化しやすいことが知られています。激しいおう吐・下痢を繰り返すため、水分補給が十分にできず気付かないうちに脱水状態に陥ってしまうこともあります。また、多くは3歳前の目が離せない時期にかかるため、ロタウイルス胃腸炎を発症すると家族が付きっきりで看ることが多くなり、感染した患児はもちろんのこと保護者への負担も大きいことから、ワクチンが果たす役割が期待されています。
ロタウイルスそのものに有効な薬剤はありません。そのため、ロタウイルス胃腸炎に対する治療は迅速かつ適切な水分補給などの対症療法が中心となります。ロタウイルスは感染力が強く、衛生環境を整えても完全に予防することは困難なため、WHOは先進国・途上国関係なく全ての地域において、ロタウイルスワクチンの定期接種化を推奨しています。
このたび承認を取得した「ロタリックス」は、2004年に世界で最初に承認されて以来、世界120カ国以上で承認されており、これまでに世界で5000万人以上の乳児に接種されています。ロタウイルスには数100種類の株があると考えられていますが、臨床試験において複数のロタウイルス株による胃腸炎に対して「ロタリックス」が有効であること(交叉免疫)が確認されており、ワクチンに含まれる株と違ったこれら多くの株に対しても有効性が期待されます。「ロタリックス」は、ヒト由来のロタウイルス株を使ったワクチンであり、2回の接種でロタウイルス胃腸炎に予防効果を示します。また、「ロタリックス」は最短で生後10週で接種が完了するため、より多くの乳幼児を早い時期から、ロタウイルス胃腸炎の脅威から守ることができます。
日本小児科学会は生ワクチン同士を含む同時接種を推進する声明を発表しているそうですが、ヒブ・肺炎球菌ワクチン、DPT三種混合の同時接種後の死亡例報告が大きく取り上げられ、「積極的な同時接種に逆風が吹いている」との声も、、、
既に定期接種が進んだ海外からはロタウイルス罹患者減少の報告が相次いでおり、ワクチン後進国の日本で、接種が進んでいくのか心配です。
しかし、これだけいろいろあるワクチンの種類を、きちんとスケジュール通りに接種していくには、同時接種は不可避でしょう。
ロタウイルス胃腸炎は細菌性腸管感染症と異なり、手指や環境の衛生改善による感染率の減少が不可能なためにワクチン開発が着手されてきた経緯があり、他のワクチン同様、一定以上のレベルの集団免疫を達成していくのが、感染者を減らす手段として一番の近道でしょうから、これからの導入に期待したいところです。