院長ブログ
ピロリ菌、人のタンパク質に偽装=細胞機能を破壊、病気に―東大
(時事通信社より)
胃がんの原因となるヘリコバクター・ピロリ菌の作るタンパク質が、人の体細胞内にあるタンパク質に偽装することで細胞機能を破壊し、病気をもたらすことが22日、東京大の畠山昌則教授(微生物学)の研究で明らかになった。米科学アカデミー紀要電子版に掲載される。
ピロリ菌の細胞機能への作用を解明したのは世界で初めて。畠山教授は「この作用が病気の原因になる」としており、胃がんなどの発病メカニズムの解明が期待できるという。
畠山教授によると、ピロリ菌はCagAという発がん性タンパク質を人の細胞内に注入する。CagA分子には「EPIYAモチーフ」という構造があり、研究では、人の体細胞内にあるプラグミンというタンパク質が同じ構造を持っていることを発見した。
プラグミンはEPIYAモチーフを介して酵素と結合し、細胞の増殖や配置を制御するタンパク質の機能を調整する。ピロリ菌の作るCagAはプラグミンに偽装して酵素と結合し、細胞分裂などに異常を起こすことが分かった。
EPIYAモチーフは他の細菌が作るタンパク質にも見られ、畠山教授は「細菌が引き起こす病気の解明につながる」としている。
cagA遺伝子を持つピロリ菌に感染した場合、持たない菌の感染よりも潰瘍や胃癌になるリスクが高く、東アジア型の菌株の大半がcagA遺伝子を持つ一方で、西洋型菌のCagA保有率は50%程度であり、胃癌発生率の地域差と相関していることはわかっていました。
現在、日本で認可されている保険診療の対象となっている除菌療法は、プロトンポンプ阻害薬(PPI)と抗生物質2剤(アモキシシリン(AMPC)+クラリスロマイシン(CAM))を組み合わせた「PPI+AMPC+CAM」の3剤併用療法で、3剤を7日間服用するものです。
近年、クラリスロマイシン耐性菌が増え、除菌率が70%程度まで低下してきており、一次除菌が失敗した場合、クラリスロマイシン(CAM))をメトロニダゾール(MNZ)に変えて「PPI+AMPC+MNZ」の3剤併用療法による二次除菌療法まで保険適応となっています。
いまのところ、当院では、二次除菌まで実施して、失敗した例はありません。
ピロリ菌の除菌については、食道がんの発生の可能性も含め、賛否両論ありますが、ほぼ除菌していく方向で固まっています。
今回の研究で、さらに除菌の必要性や方法、治療の効率など、研究が進んでいくことでしょう。